霧にまぎれる獏たる景色
遠く寺院の鐘音が
樹々の梢の葉先を渡り
声明風の音を伝え
円か 月の杜に舞い降りる
いぶし銀の月影が
白き画箋に墨滴をしたたらせ
にじみ拡がる水滴の雫
水滴穿石
水琴窟に落下して
静謐のうちに木霊する
秘めたるは念仏
やがて訪れる 無音のありか
哀れみ 悲しみの誓い
煩悩具足 凡夫の願い舟
火宅無常 萬のことも
空言戯言 あることなきに
生死の苦界を渡り
報土の岸に着きぬもの
迷いの黒雲晴れ
無碍の光明一味にして
無明の闇を看破する
雲にまぎれ 獏たる景色がひろがる
遠く寺院の鐘の音が
木々の梢を 渡つて
声明 風の音を伝える
円なる舞をして
月影を映させては
墨滴をしたたらせ
白き 画仙に染みひろがり
しずくのはしから 落ち着きて
水琴窟の 水滴の響き
静謐に木霊し
破られし沈黙
静寂世界 無音のありか
いぶし銀なる 朧月
憂いに はかなく 沈む影
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