VRChatで撮影された映像の祭典「VRCムービーアワード」。現在第1回アワードのノミネート作品が公開されており、一般投票が2月9日まで行われています。授賞式は2月11日です。
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VRC映像の頂点が決まる。
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1st VRC MOVIE AWARD
授賞式
2023.2.11 20:00
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— VRCムービーアワード (@VRC_MOVIEAWARD) February 4, 2023
個人が集って力をあわせると、VR空間でここまで面白い作品を作れる、というのを証明してくれる、力作揃いのイベントです。今回はノミネート作品の中から、筆者たまごまごの完全な独断と偏見でいくつか作品をピックアップ。ごく一部をご紹介します。
長編作品賞ノミネート作品『IRREGULAR’S』
男女バディアクションが好きな人なら問答無用でおすすめ。観たい要素が全部入っています。
ニューヨークを舞台にしたポリスアクション作品です。FBIでコンビを組んだエレナと榊の、ちょっと凸凹で、ハードボイルドとコミカルの入り混じるやりとりが熱く、楽しく、切ない。脚本のセリフひとつひとつが洒落ていて、演者、声優の演技が隅々まで見事。映画全体がふたりの魅力にフォーカスするような構成で作られている作品です。観終わった後きっと、ふたりのことが好きになっているはず。
必見なのはカーアクションシーン。VRChat内で実際にカースタントをして撮影しているようですが、これがかなりの迫力。大胆なアングルの撮影技術もさることながら、魅せる運転シーンがどっさりと見られます。カースタントチームの腕が光ります。
戦友、バトル、カーアクション、敵討ち、正義、いくつかの謎…「映画」の面白いところをぎゅっと凝縮したような痛快な作品になっています。スタッフロール後までお見逃しなく。
長編作品賞ノミネート作品『NINE -PREQUEL OF EMETH-』
本格的サイバーパンク映像の作りとハードボイルド感あふれる脚本をVR上で突き詰めた決定版的作品。尋常じゃないレベルに細部まで作り込まれた世界観が魅力のひとつです。士郎正宗作品をリスペクトしたような画面外の脚注スタイルは、映画ではほとんど観られないもの。YouTubeの画面を活かした使い方がとてもユニークです。これがあることで、キャラクターの会話の裏側、映像に映っている世界、描かれていない設定などの情報が、怒涛のように流れ込んでくる快感を得られます。
それに耐えうるだけの世界観構築を、映像で行っています。カットひとつひとつに手抜きがありません。脚本もさることながら、美術班・撮影班のこだわりが見られます。実写でやるとなるととんでもない金額がかかることになりそうですが、VRChatはここが強い。
主人公の硬派な魅力と渋くてチートな技術、追われる少女の跳ねっ返り感と激しいアクションが、全編を通じてワクワクさせてくれます。特に少女の戦闘シーンは軍隊格闘術さながらでド派手。助けられるだけじゃないヒロインの華麗さを、アクターのLUMI*るみ*が見せてくれます。
ちなみにこの作品はホテルカデシュの「プロジェクト:エメス」の外伝にあたりますが、観ていなくてもこれ一本で成立しており、十分に楽しめます(観てからだとより楽しめます)。
短編作品賞ノミネート作品『THESEUS』
VRChatは基本的にプレイするとき一人称視点です。その見え方を撮影に落とし込んで演出に活かした、一人称視点ショートムービーです。
一人称なので自身の体は途中までほとんど見えないのがうまいところ。おそらくガイノイド(※女性型のヒューマノイド)的な存在が主人公の様子。人間と異なる時間の流れの中、ときには体が失われ、意外な出会いで修理され…を繰り返していく中で、「テセウスの船」のように体のパーツはどんどん入れ替わっていきます。
破損状況と修理状況は自身の目では見えないのですが、視覚の調整と伴って映像が変化することでなんとなくわかるのが演出としてユニークです。一人称だからこそ、言葉に出ない感覚的部分が絵面で表現されています。なお、こちらの作品はクレジットを観ると、全て一人で作っているのがわかります。
短編作品賞ノミネート作品『What If Mirrors Were ILLEGAL In VRChat? (日本語字幕) 』
今回のノミネート作品では異色の、VRChatのあるあるネタで構成された、ドタバタメタコメディ。VRChatをやってない人にはちょっと「?」かもしれませんが、へんてこな異文化を眺める感覚で観るとかなり面白いと思います。
VRChatには「ミラーの前に人が集まる」「ミラーごしに相手に話しかける」という風習が一部の人に、でも世界中にあります。直接顔と顔を見合わせないということです。ところがミラーが禁止されてしまったらVRChatどうなっちゃうの……?
「ロリアバターがメタバース最高位」とか「無言勢」「赤ステ」など、ハイコンテクストなVRChatネタが多めなので、VRChat経験者ほど楽しい内容です。
とはいえ後半の、人がミラーに向き合うことの哲学部分は、誰もが考えられる部分かもしれません。VRChat内輪受け的なムービーでありつつも、万人が楽しめるレベルに映像が研ぎ澄まされているのがすごみです。
脚本賞ノミネート作品『ドロボウVSストーカー』
ほぼ全編に渡って真横から撮影しているという舞台的手法を用い、大事なところ・おもしろいところでは正面にカメラが切り替わる、演劇・コント演出の美味しいところを詰め込んだコメディ作品です。軽快なやりとりと大げさな演技によって、全員がキャラ立ちしていて観ていて気持ちが良いです。
ドロボウ、ストーカー、女性の三人のキャラクターづけはかなり記号的になっているため、余計な情報は一切なし。シンプルに演技を楽しむことができます。ドロボウの逃げのうまさ、ストーカーの判断力の甘さ、女性の行き過ぎた勘違いが交差するユニークな作品です。ぜひともこのメンツでの他のシチュエーションコントを観てみたい、と感じる息の合い方でした。
撮影賞ノミネート作品『Ognanje』
一件の家、一つの母子家族を題材にした、サイレントショートホラー作品です。観てハッとさせられるのは、映像の美しさ。登場人物たちのアバターが全て美麗で、衣装も印象的だというのがひとつ。カットごとのアングルに写真的なこだわりが観られるのがひとつ。そして被写体深度の使い方がめちゃくちゃうまくて空間が深く重く見えるのがひとつ。
ホラー映画での「意味有りげで観客を惑わす画面づくり」が徹底されています。仲の良さそうな母子ですが、少女の目は常に何かを思っているかのようで不安になりますし、背景と人物の距離にうまれるピンボケは落ち着かない心を刺激してきます。じっくり観ることで気付かされる部分もあるので、是非演出の数々の意味を考察しながら観てみてください。
美術賞ノミネート作品『VR演劇『3:うたかたのひび』Drama Hall × コメディアス』
VRで演劇として公開されたものをマルチカメラで撮影し、編集したのがこの作品です。舞台になるのは無人化したα星。「私」こと93番と07番のふたりは、伝記だけが大量に残されている場所の調査に入ります……。
閉じた空間ながらも上へ上へと登っていくため舞台の転換が必要になります。これが実際の舞台よりVRの方が便利なところ。背景ワールドの色使い、キャラクターアバターのデザインなど、美術的センスにも目を見張るものがあります。
VRChat上で演劇をしているグループは徐々に増えており、その中でも結果を残し高い評価を得た作品として、演劇好きには是非観てほしい作品です。ふたりしか出て来ない舞台ですが、無人の中に伝記がたくさんあることの意味がしっかり解釈され演じられているので、観ていて全く飽きません。
以前上演されたVRで演劇「ほんとうのわたし」もノミネートされていますので、合わせてご覧ください。
VRChat上でのリアルタイム演劇公演「3:うたかたのひび」が発表
MoguLive
番外編:「新入社員用研修ビデオ「現場に出る前に」」
今回はノミネートされていない作品ですが、非常にユニークかつ凝った内容の一本なので、筆者たまごまごの好みで紹介します。工業事業系の会社の研修ビデオをVRあるあるネタでパロディ化した作品です。危険予測や安全対策のためにどんなことをすればいいのかを、VRの場合であることを考えながら紹介。事故を防ぐ独自技法をハチャメチャ映像で見せてくれます。いやまあそうなんだけど……という相手役ナレーションの脱力が適度で楽しいです。
昔の研修ビデオ風の再現度の高さだけで笑えてしまう作品です。メインナレーションの人の演技はかなり研究されており、いかにも昔の教則ビデオ的です。品質管理用音声が入っているなんていう小ネタまであります。VR好きはもちろん、仕事で鬱憤が溜まっている人にもおすすめの、痛快な一本です。
VRChatで映像を作るメリットはたくさんあります。何よりロケーションにかかる費用がリアルと比べ物になりません。スタントも何回でもやり直せます。爆発もさせ放題です。戦闘機も飛ばしまくれます。カメラの位置も最近のアップデートで自由自在になりました。すでにあるワールドを活用することもできます。
また遠隔で集合しているので、演者が同じ現場に集って撮影する必要がない、というのも大きなポイント。天候の心配も必要ありません。
短編作品賞にノミネートされている「voyeurism」は、VRChatの中でもとりわけ簡素化された、ローポリゴンのシンプルなアバターで撮影されたショートホラーです。観ていただければわかりますが、シンプルだからこそ引き立つ恐怖を演出する手法を取っています。こういう脚本と演出に特化するムービーづくりに、VRChatのようなメタバースはぴったりです。
今回の「ドキュメンタリー賞」枠のように、実際にあったイベントやワールドを撮影した映像は、VRChatという「人のいる場所」「人の手の入った場所」だからこそできるもの。これは次回以降があればもっといろいろな記録映像を観てみたいところです。
フットワーク軽く、アマチュアが集って、思い切って映像作りをするきっかけになるであろう「VRCムービーアワード」。第1回の授賞式がとても楽しみです。
各ノミネート作品はこちらのリストにまとまっていますので、投票の際は参考にしてみてください。
・VRC MOVIE AWARD OFFICIAL CHANNEL
・VRCムービーアワード(@VRC_MOVIEAWARD)さん / Twitter
各賞ノミネート一覧
第1回VRCムービーアワード:作品賞ノミネート一覧
第1回VRCムービーアワード:短編作品賞ノミネート一覧
第1回VRCムービーアワード:ドキュメンタリー賞ノミネート一覧
第1回VRCムービーアワード:監督賞ノミネート一覧
第1回VRCムービーアワード:脚本賞ノミネート一覧
第1回VRCムービーアワード:撮影賞ノミネート一覧
第1回VRCムービーアワード:主演俳優賞ノミネート一覧
第1回VRCムービーアワード:助演俳優賞ノミネート一覧
第1回VRCムービーアワード:音響音楽賞ノミネート一覧
第1回VRCムービーアワード:美術賞ノミネート一覧
第1回VRCムービーアワード:アクション賞
全出展作品一覧はこちらのツイートで確認してください。
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#VRCムービーアワード
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総計62件もの作品が集まった
第1回VRCムービーアワードの
作品一覧を大公開いずれも劣らぬ名作揃い
果たして栄冠は誰の手に…
結果発表:2月11日(土)予定
乞うご期待
#VRChat pic.twitter.com/mJzTK2lfCR
— VRCムービーアワード (@VRC_MOVIEAWARD) January 1, 2023
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