「VRヘッドセットは欲しいけど、どれが良いのか分からない」と悩んでいる方は多いはず。実際、VRヘッドセットの種類は多く、その違いを見極めるのは難しいもの。しかし「VRヘッドセットで何がしたいか?」に着目すれば、どれを買うべきかは絞られます。今回は用途別におすすめのVRヘッドセットを紹介します。
購入の前に、まず注意すべきこと
①お部屋のスペースは大丈夫?
VRを使うときは、自分の周囲に十分なスペースを設けることが推奨されます。必要なスペースはコンテンツによってまちまちですが、少なくとも両手を広げたままその場で回転して、障害物にぶつからない程度の広さはほしいところ。事前にプレイスペースを確保しておきましょう。
②PCのスペックは大丈夫?
PCに接続するタイプのVRヘッドセットを動かすには、PC自体に相応のスペックが必要です。基本的にはミドルクラス以上のゲーミングPCならば問題ないことが多いですが、使いたいVRヘッドセットや遊びたいコンテンツによって、要求スペックは上下します。なおゲーミングノートの場合、ものによってはグラフィックボードの影響でうまく動作しないこともあるため、注意です。
③センサーは設置できる?
VRヘッドセットによっては、部屋の中にトラッキング用のセンサーを何台か設置する必要があります。設置する上で十分な高さはもちろん、壁に穴を開けてネジ止めが可能か(ダメなら固定できる代替案はありそうか)を事前に確認しておきましょう。
用途①:よくわからないけど、とにかくVRやりたい!
まだVRがよく分からず、PCも詳しくない場合、PC接続型ではないVRヘッドセットを選ぶのが無難です。おすすめは以下の2つです。
Oculus Quest
Oculus Questは「一体型」と呼ばれるVRヘッドセットです。最大の特徴はヘッドセットだけで動作する点。ハイスペックなPCやケーブルは不要です。開封したその瞬間にヘッドセットをかぶれば、一瞬でVRの世界に飛び込めます。
コントローラーも直感的に扱いやすく、コンテンツも充実。とにかくはじめて触れるVRヘッドセットとして最適です。
ちなみにUSBケーブルでPCと接続すれば、疑似的にPC接続型VRヘッドセットとして動作できる「Oclulus Link」という機能もあります。その意味でも十分なエントリーモデルといえるでしょう。
【Oculus Quest】「Oculus Link」を徹底検証 ケーブルも比較 | Mogura VR
MoguraVR
PlayStation VR
「PCは持っていないけど、PS4ならある」という人にはゲーム機本体と接続するPlayStation VRもアリ。必要金額も、いちからゲーミングマシンを購入するより遥かに安くまとまります。
ヘッドセット自体の性能はまずまず。対応コンテンツはPlayStation Storeに依存するため、「VRChat」などの一部定番タイトルが遊べないことには注意です。ただしPlayStation VRでしか遊べないタイトルも多く、「ASTRO BOT:RESCUE MISSION」といった白眉な一作もあります。またモーションコントローラー「PS Moveコントローラー」で遊べるゲームもありますが、PS4付属のコントローラーでプレイできるものも揃っています。
用途②:いろんなVRを(なるべく安く)体験したい!
とにかくがっつりと幅広く、そして美しいグラフィックで没入感を最大限に得ながらVRを体験したいのなら、PC接続型のVRヘッドセットを選びたいところ。特に上で紹介しているOculus Quest向けとPCVR向けでは同名タイトルが多くありますが、クオリティがかなり異なります。
比較的安価かつ設備面でも手軽なものは以下の通りです。
Oculus Rift S
Oculus Rift Sは価格、性能、使い勝手、の全てでバランスの取れた一台です。センサーを設置せずともトラッキングができる「インサイドアウト方式」で、PCにつなぐだけ比較的簡単にセットアップできます。価格はおよそ5万円です。
コントローラーはOculus Questと同型で扱いやすく、ヘッドセット本体も軽いため、装着感も快適。画質も良好です。Oculus限定コンテンツも含めると、対応コンテンツの数は非常に多く、これ一台でいろいろなVRコンテンツに触れられます。
Windows MRヘッドセット
名称は「Windows Mixed Reality」です。Windows独自のMRプラットフォームに対応したヘッドセットは価格が安価なのがポイント。とりわけ「HP Reverb」は、ハイエンドな機種を超える解像度でありながら、価格が5万円前後とかなりコスパが良い機種です。
こちらも「インサイドアウト方式」。必要なソフトウェアはWindows 10に標準搭載されているため、Windows 10のPCに接続すれば、あっという間にセットアップできます。ヘッドセットの種類も非常に豊富です。
ただし全体的にトラッキング性能はそこそこで、Windows MR自体も独自性が強く、最初の一台としてはクセが強めです。
用途③:VRゲームをガッツリ遊びたい!
VRゲームをガッツリ遊びたい場合は、外部センサーを設置するタイプのVRヘッドセットがおすすめです。トラッキングが安定するため、特に「Beat Saber」などの身体を激しく動かすVRゲームとの相性が良好。そんなVRゲーマー向けの機種は以下の通り。
HTC VIVE Pro
ハイエンドなVRヘッドセットの中では手堅い一台です。HTC VIVEシリーズの上位機種で、解像度の高さや良好な装着感、重心バランスの良さから、オールマイティに使いやすい
のが特徴といえます。
価格も先日改定され、スターターキットは10万円ほどで購入可能となりました。ただ他機種と比べてコントローラーの使い勝手が少し良くないのが難点。
VIVE Cosmos Elite
もう1台、VIVEシリーズの中でも手堅いハイエンド機種として、VIVE Cosmos Eliteも捨てがたい選択肢です。こちらはVIVEの新シリーズ・VIVE Cosmosの外部センサー対応タイプです。
使い勝手は初代VIVEに近く、解像度はVIVE Cosmosならではの安定した高さを誇り、比較的使いやすい一台です。フリップアップ式のゴーグルを採用しているため、外の視界を見やすいという特徴もあります。
また、VIVE Cosmosシリーズは外部モジュールを取り入れる拡張性が持ち味です。VIVE Cosmos Eliteも、インサイドアウト方式のVIVE Cosmosへ換装可能となる可能性があるため、後々の将来性を見込んで選択するのも良いでしょう、
VALVE INDEX
とことん性能を重視したいならば、VALVE INDEXが良いでしょう。現行の中でも最高クラスの解像度・視野角と、耳への負担が少ないイヤーオフスピーカーなどの独自機構などにより、VR体験の没入感はトップレベルです。ただし本体の重心バランスが前のめりで、長時間使用するには負担が大きめ。短時間みっちりと遊び倒すのに向いています。
また両手に装着し、五指の動きや圧力まで検知する、INDEXコントローラーの使い勝手も抜群です。ちなみに、INDEXコントローラーは単体でも動作し、HTC VIVE Proなどと組み合わせて使用できるので、コントローラーだけ購入するのもひとつの手です。
用途④:「VRChat」に行きたい!
VRヘッドセットを買う理由のひとつに「VRChat」を挙げる人は多いはず。基本的には軽く遊ぶだけなら、どんなVRヘッドセットでも問題ありません。ただし目的などによって最適な選択肢が異なってくるので、ポイントや注意点を紹介します。
1.フルトラッキングで動き回りたい!
+
もし美少女アバターを身にまとい、全身フルトラッキングでkawaiiムーブをやってみたい場合は「VIVE Tracker」という拡張デバイスの使用が最適です。その場合、ほぼ自動的にLighthouseシステム対応のヘッドセット、つまりHTC VIVEシリーズやVALVE INDEXなどにしぼられます。
2.長時間VRの世界に浸りたい…
何時間も連続でログインしっぱなしな場合は、装着負担の低さがポイント。重心バランスが適当なHTC VIVE Proが良いでしょう。本体重量の軽いOculus Rift Sもアリですが、基本的にフルトラッキングを諦めることになります。
3.Oculus Questでも利用できるけど…
Oculus Quest版の「VRChat」のみ、シェーダーやポリゴン数に対して制限がかかるため、一部アバターやワールドなどが使用できない可能性があります。「バーチャルマーケット」など一部イベントではクロスプラットフォーム対応が進んでいるものの、PCVRユーザーとは少しだけ体験が異なります。
ただしOculus Linkを使用したり、「Virtual Desktop」経由から起動するなど、Oculus QuestでPCVR側の「VRChat」を遊ぶ方法も(一応)あります。
用途⑤:3DのVTuberになりたい!
VTuberになる目的でVRヘッドセットを購入するなら、「フルトラッキングにするか?」、「どれくらい利用するか?」といった目的から選択肢を絞ります。その上で、およそ理論上最もリッチな組み合わせはこちら。
HTC VIVE Pro Eye + INDEXコントローラー + VIVE Tracker
+
+
HTC VIVE Pro Eyeをヘッドセットとして採用し、その上でVALVE INDEXのINDEXコントローラーを導入。VIVE Trackerも装着するという組み合わせです。
目の動き、指の動き、そして全身の動きを全部トラッキング可能で、アバターの表現力を現状考えられる限りの最高レベルまで高められます。ただしアイトラッキングまで対応しているVRコンテンツは、現状限られているので注意が必要です。
なお、フルトラッキングにこだわらない場合、Webカメラベースのフェイストラッキングソフトウェアという選択もあります。例えば「Luppet」は、LeapMotionを併用して両手の動きを高精度にトラッキング可能です。
今すぐVTuberになれる!お手軽ツール20選を徹底紹介(2020年最新版) | Mogura VR
MoguraVR
用途⑥:VRライブを観に行きたい!
「VRライブに参加したい」ときは、長時間の装着が苦にならないヘッドセットがおすすめ。ただし現状では各ライブプラットフォームごとに対応VRヘッドセットが異なるため、まずは行きたいVRライブの対応プラットフォームを調べておきましょう。以下は簡易ですがその組み合わせです。
対応ヘッドセット |
デスクトップ対応 |
スマホ対応 |
|
cluster |
Oculus Rift、Oculus Rift S、HTC VIVE、HTC VIVE Pro |
○ |
○ |
VARK |
Oculus Go、Oculus Quest、PlayStation VR |
✕ |
✕ |
SHOWSTAGE |
Oculus Go |
✕ |
○ |
ライブによってはデスクトップPCやスマホからでも鑑賞できますので、必ずしもVRヘッドセットが必須ではありません。
とはいえ新たなプラットフォームも続々と登場している状況なので「30分~1時間装着しっぱなしに耐えられる」と思えるヘッドセットを用意しておくと、いざという時に困りません。
用途⑦:寝転んで動画やブラウザを見たいだけ!
単純に寝転がりながら動画や漫画、SNSなどを見るだけで十分という方も少なくないはず。それなら無難な選択肢はOculus Goです。2万円台と安価、VRヘッドセット単体で動作します。これひとつでYouTubeやAmazonプライムビデオ、DMM動画などを視聴できます。
ただし、Oculus Goは上下左右の動きまでは検知できず(3DoF対応のため)、高品質なVRコンテンツを楽しむには不向きです。また現在、Oculus GoでできることはOculus Questでもできるようになりつつあるため、悩む方はOculus Questの購入が良いでしょう。
VRヘッドセットにどうしても手を出しづらい人は、スマホ対応のVRゴーグルが良いかもしれません。VR体験の印象は大きく変わってしまいますが、スマホのみに対応したコンテンツも多く、何より非常に安価で購入できます。詳しくは下記のリンクを参考にしてください。
VRゴーグルどれがおすすめ?選び方と実機比較【2020年度版】
MoguraVR
「VRでなにがしたいか」をしっかりと決めてから
これまで紹介してきた中で、どの用途が自分にぴったり当てはまるのかを考えると良いでしょう。VRそのものは現在進行形で発展し続けているので、将来新しいコンテンツやプラットフォームが世に出た時のための「備え」として、少し背伸びをしたVRヘッドセットを選ぶのも良いでしょう。
2020年現在では、VRヘッドセットの貸出サービスや体験会イベントもあります。国内で実機に触れられる場所はそこまで多くないので、購入が不安な人はそういったサービスで試してみると実感を持ちやすいはず。
いずれにせよ高い買い物なのは間違いありません。「VRでなにがしたいか」をしっかり決めてから、最初のVRヘッドセットを選びましょう!
付録:各ヘッドセット比較表
お値段比較表
ヘッドセット |
価格(税別) |
Oculus Quest |
49,800円(64GB)/62,800円(128GB) |
Oculus Rift S |
49,800円 |
Oculus Go |
19,300円(32GB)/25,700円(64GB) |
HTC VIVE Pro |
139,545円(フルキット)/99,990円(スターターキット) |
HTC VIVE Pro Eye |
179,168円 |
VALVE INDEX |
125,800円 |
HP Reverb |
54,800円 |
PlayStation VR |
34,980円 |
各性能一覧
ヘッドセット |
ディスプレイ |
解像度(左右の合計) |
リフレッシュレート |
視野角 |
トラッキング |
Oculus Quest |
OLED |
2880×1600 |
72Hz |
100度 |
一体型 |
Oculus Rift S |
LCD |
2560×1440 |
80Hz |
115度 |
インサイドアウト |
Oculus Go |
LCD |
2560 x 1440 |
60Hz |
110度 |
一体型 |
HTC VIVE Pro/HTC VIVE Pro Eye |
OLED |
2880×1600 |
90Hz |
110度 |
アウトサイドイン |
VALVE INDEX |
LCD |
2880×1600 |
80Hz / 90Hz / 120Hz / 144Hz |
130度 |
アウトサイドイン |
HP Reverb |
LCD |
4320 x 2160 |
90Hz |
114度 |
インサイドアウト |
PlayStation VR |
OLED |
1920×1080 |
120Hz |
100度 |
アウトサイドイン |
執筆:浅田カズラ