【XR Kaigi】世界で戦えるテック×パフォーマンスを――T&S流チームビルディングの極意

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(右からT&Sの稲葉繁樹氏、喜々津良氏、そしてToyotaka氏)

2019年12月4日(水)秋葉原で開催された「XR Kaigi」のプラチナスポンサーを務め、「AR Roppongi x Ingress」「Pokémon GO AR展望台」を提供する株式会社ティーアンドエス(T&S)。同社代表取締役兼「THINK AND SENSE」のプロデューサーである稲葉繁樹氏を筆頭に、喜々津良氏、Toyotaka氏が、多様性を持つメンバーの個性を活かしたチームビルディングの方法や、リアルな現場でテクノロジー使うコンテンツ制作のあり方について語り合いました。当日は、Toyotaka氏とメンバーによるダンスパフォーマンス等も披露。テクノロジーとアートを融合させる「JIKKEN」の裏側に迫る、貴重なセッションです。

目次

1.異色メンバーで実現したJIKKEN
2.目指すはテクノロジカル・クリエイティブファーム
3.日本から発信。世界で戦えるテックショーを
4.多様な視点を活かし、人を巻き込むチーム作りとは?
5.XRでオフラインの没入感向上へ
6.THINK AND SENSEの野望とは?

異色メンバーで実現したJIKKEN

喜々津良氏(以下:喜々津):

THINK AND SENSEの喜々津です。僕らは2019年よりテクノロジーチームのTHINK AND SENSEと、パフォーマンスのToyotakaがタッグを組んで、テクノロジーとアートを融合させる「JIKKEN」という活動を行っています。

ストリートとテクノロジーが出会うとき、何が起こるのか? 表現の最前線を行く「JIKKEN」を見よ

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THINK AND SENSEはテクノロジーのチームの中に、発声や息の出し方でさまざまな音色を出すヒューマンビートボックスや、鉄棒、ダンス、フラフープといった複数のパフォーマーが所属してるんです。

ステージ上にLEDビジョンを設置し、照明などと連携させ、より魅力的なダンスステージを作りあげるテクノロジーのコンテンツを制作しています。

Toyotaka氏(以下、Toyotaka):

テクノロジーとパフォーマンスを融合させるというと、光り輝くテクノロジーを使うイメージが強いと思いますが、僕たちが今、手に持っているスマホを使ったパフォーマンスなどもありますね。

喜々津 :

ここからはパフォーマーの紹介です。

Toyotaka:

THINK AND SENSEのストリートダンサーでパフォーマーのToyotakaです。僕は約17年ストリートダンスをやり、大学卒業後は企業で働きながらダンスを続け、ビートボックスや舞台にチャレンジしながら、アンダーグラウンド、オーバーグラウンドを問わず活動しています。

次にメンバーの紹介をします。僕の大親友でもあり、JIKKENをサポートしている上西隆史さんです。彼は2011年からダンスユニットの「WORLD ORDER」のメンバーとして活動後、「AIRFOOTWORKS」 というチームを立ち上げました。世界で唯一、彼しかできない恐ろしいほどの筋肉量で鉄棒を握るダンスパフォーマンスに取り組み、JIKKENでもテクノロジーのパフォーマンスで出演しています。

続いて、今日はグループからRYOとSHUNが応援にかけつけてくれていますが、僕が所属する「Beat Buddy Boi」について。JIKKENはBeat Buddy Boiが中心となって活動しています。

僕らはちょっと特殊で、ラップやダンス、ビートボックスや、生でMPCというビートメイキングをするヒップホップクリエイティブの集団で、アメリカで生まれたヒップホップカルチャーをステージ上でどこまで追求していくかということに挑戦しています。

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目指すはテクノロジカル・クリエイティブファーム

稲葉繁樹氏(以下、稲葉):

T&Sの稲葉です。THINK AND SENSEは先端技術を活用し、新しいことに挑戦する部署です。東京、福岡、大分、アメリカに拠点を構え、新たな価値を「複合性」で社会実装する「テクノロジカル・クリエイティブファーム」という考え方を持っています。

今日見ていただいたToyotakaのように肉体を使ったパフォーマンスの歴史は長く、すでに肉体表現の演出は限界まできています。Toyotakaを始め、ダンサー、ミュージシャン、DJの彼らは、新たな表現をテクノロジーに求めて、僕らのところに飛び込んできました。

僕らはXRのテクノロジーと、このパフォーマンスを組み合わせれば、もっとおもしろいことができるのではないかと考え、JIKKENという名の実験場をしています。

クリエイティブファームとして、僕たちがチームでやったことのひとつに、肉体を極めたスポーツ選手とXRを組み合わせたらどんなおもしろいことができるかというものがあります。

試合を多視点から観る体験をさらに一歩進めて、バスケットボールの試合中に観客に「Nreal Light」をつけてもらい、試合を肉眼で観戦するよりおもしろいものを提供できないか模索したり、興行面でもっと多くの人にスポーツを楽しんでもらえるような取り組みをしています。


(六本木ヒルズ「Pokémon GO AR展望台」)

またMedia Ambition Tokyoでは、MicrosoftのHoloLensを活用して六本木ヒルズの中に実寸大のポケモンが出現する「Pokémon GO AR展望台」をやりました。スマホだけではできる表現に限界があり、僕らは未来に向けてHoloLensを使ったプロモーションを行いました。この制作物のクオリティの高さが、NianticとSoftBankからの評価の高さにもつながっています。

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日本から発信。世界で戦えるテックショーを

稲葉:

ここからチームの話に入ります。ToyotakaはイギリスでBest Performance Awardを獲得し、ダンスで世界一になったことがあるんですね。以前SONYのXperiaのCMでアーティストやアスリートが出ていた回があるんですが、いつだっけ?

Toyotaka:

2012か2013年くらいです。

稲葉:

そう、ToyotakaはそのCMに出ていて、ピュアでおもしろい子なんですが、「ダンスで世界一になれば、今日から俺はスーパースター」という道が待っていると思っていたんですね。ところが世界一になってみたら、そんな道はなかったと(笑)。

これはなぜかというと、日本の産業界においてパフォーマーのマーケットが小さいという前提があるからなんです。

なのでJIKKENは、Toyotakaに限らず、これから日本にはそういう才能のあるパフォーマーがどんどん出てくるだろうと。その彼らがテクノロジーを活用して、もっと大きなマーケットで勝負できる体制をとれるようチームビルディングを行っています。


(テクノロジーを活用した舞台を手がけ、世界で展開するシルク・ドゥ・ソレイユ)

喜々津:

それから海外では、一般の人もテクノロジーを使ったショーを楽しめるようになっているんですね。例えば、BLUE MANや、シルク・ドゥ・ソレイユが大掛かりなプロジェクションマッピングをやったり、バイクを使った「R.U.N」という公演も行われています。


(国内のXRショーの事例について。左はカナダのMoment Factory)

国内でもいくつかテックショーはありますが、カナダのMoment Factoryが日本に持ち込んだものです。僕らがJIKKENをやるのは、日本発で世界に通用するテックショーがまだまだ少ないという課題があるからなんです。

稲葉:

Toyotakaは、2020年1月24日から京都のイマーシブシアターで松竹の「サクラヒメ」という演劇に出るんです。主人公5人でヒロインを奪い合うんだっけ?

Toyotaka:

元宝塚のヒロインを奪い合います(笑)。

稲葉:

その舞台はユーザーのリアクションによって、現場で主役が決まると。

Toyotaka:

投票で主役が決まるというやつです。

稲葉:

日本にも新しいテクノロジーを活用したエンターテインメントをやろうとする企業は何社もあるんです。JIKKENはXR技術とパフォーマンスの成功事例を、一つひとつ切り出してまとめたものを全国で展開しようというプロジェクトです。

そして、ゆくゆくは海外進出していきたいですね。Toyotakaもダンスで海外に呼ばれてゲスト出演することはありますが、あくまでも1人のパフォーマーがゲストで呼ばれるのであって。僕らはテックとダンスを融合したJIKKENで、新しいパッケージのライセンスを作ろうとしています。言語に左右されず、誰が見ても楽しい思えるこのパフォーマンスに可能性とチャンスを感じてチャレンジしています。

多様な視点を活かし、人を巻き込むチーム作りとは?

喜々津:

ここからは制作系の話をさせていただきます。僕らはステージとなるライブハウスの方や照明、音声の方と直前の打ち合わせだけで終わらせずに、制作の部分から一緒にやれないかと話しています。

例えば、もっとインタラクティブなショーにするために、音に反応して、会場の照明ごと動かしてしまう試みだったり、すぐれたパフォーマンスやテクノロジー以外でももっと楽しいものができないか?など、いろんな人を巻き込んだチーム作りをしています。

以前技術チームが、他のダンサーやパフォーマーの方と、参加するショーのその時だけ打ち合わせをしたことがあって。そうすると、やりとりの中でステージに対する価値観がズレるんですね。

僕らは価値観も含めイチから話し合うことで、クリエイターも一緒になってパフォーマンスを作りあげていく視点を大事にしています。

Toyotaka:

そうですね。僕が16年間パフォーマンスをやる中で、テクノロジーの使い方の面で、制作と演者の間で視点に違いがあると感じました。

「パフォーマンスをすごく見せるためにテクノロジーを使うのか」「すごいテクノロジーを見せるためにパフォーマンスするのか」、システムを作る側とパフォーマーではまったく視点が違うんですよね。

だから、ショーの打ち合わせでも1回、2回で「じゃあ、作りましょう」と終わらせるのではなく、僕らパフォーマーも制作チームに入り、一緒にものづくりする部分を大切にしています。その点も、パフォーマーとしてやりがいのある部分かな。

喜々津:

THINK AND SENSEは、XRの技術系エンジニア、アーティストやダンサーと、様々なタレント性を持った人が所属したチームで動いており、そこから生まれるクリエイティブを掛け合わせ、「複合性」というテーマで新たな価値を生み出しています。弊社にはVJもいますし、様々なエンタメが作れないかと考えています。

Toyotaka:

そうですね。ビートボックスしながらダンスできるのは、たぶん日本で僕だけだと思うので。

稲葉:

ビートボックスってなんですか(笑)?

Toyotaka:

はい、質問ありがとうございます(笑)。

よく間違われるのですが、僕がやっているのはビートボックスで、ボイパとは違うんですよね。
ちなみにボイパとは、ボイスパーカッションのことで、フジテレビ系列の番組の「青春アカペラ甲子園全国ハモネプリーグ」というコーナーでRAGFAIRのおっくんがやって日本で広まったのが始まりです。

ボイパはアカペラグループの中のパーカッション担当という意味で、ビートボックスはアカペラやパーカッション以外の音も出せるんですよね。

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僕らはビートボックスをやりながら、ダンスも踊ってみたり、鉄棒のパフォーマンスや、会場で生でお客さんに「JIKKEN」と声を出してもらって、その音をその場でサンプリングして音楽に仕上げ、その音楽にあわせ踊るといったヒップホップでよくある手法のひとつ「サンプリング」などを使った熱いパフォーマンスを実践しています。

XRでオフラインの没入感向上へ

喜々津:

「XRでなにをするか」という点で、コンテンツの話をしましょう。JIKKENのターゲットはミレニアル世代が多く、物を買うよりフェスなどへ出かけて楽しみたいという「モノよりコト」を大事にする傾向があります。

そこで僕らはコンテンツ制作の上で、観客になんらかのアクションやフィードバックを返すことで、観客が参加し一緒にショーを作り上げている感覚になる、双方向という点を大事にしています。

テクノロジーを使って、観客がなにかその場でフィードバックできるコンテンツを作れば、その人だけの視点を持ったオリジナルコンテンツが楽しめ、インタラクティブなその場限りの体験が生まれます。

Toyotaka:

そうですね。ダンスでも体験に重きを置く方が多いですね。僕はたまにダンスレッスンをやるんですが、ダンスをただ観る観客より、ダンスを体験される人の方が多く消費する印象がありますね。

一般的に「シルク・ドゥ・ソレイユを観に行く」という経験はあるかもしれませんが、「ダンスを観に行く」より「ダンスレッスンを受けに行く」方が数は多いですよね。そういう意味でも、実際に体験したり、インタラクティブであるということは大事。

同じ場所で同じショーを観ても、デバイスをつけることで、一人ひとり異なる体験ができたり、例えば同じダンスを観ても、違う方の視点の物語が観られるといった新しい体験を拡張できるのではないか? と思っています。

喜々津:

またXRの「パフォーマンス・テクノロジー」でできることのひとつに、世界観(の表現)があります。シルク・ドゥ・ソレイユやディズニーランドなどでも、霧にマッピングするといった現実にないものをXRで作る、インタラクティブなコンテンツIDが増えています。

見たことがないようなファンタジーなコンテンツの世界観を、その場でパフォーマンスに織り交ぜることで、元々表現したかった世界観をXRでは作れます。ヘッドマウントディスプレイを使ったVRも没入感がありますが、現実空間のスタジオで爆音が流れ、目の間で人が踊る以上に没入できる体験はないですよね。そのオフラインの場を、イマーシブにのめり込む体験へと引き上げるのにXRは有用だと思っています。

JIKKENでは、新しいデバイスの活用で「AI」を全体のテーマにしています。複数のデバイスを使うときに表現がしやすく、例えば鉄棒のパフォーマンスにLED連動させてサイバー感を表現したり、風船を使ったパフォーマンスなど没入感が出るアイテムを利用したライブもしています。

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稲葉:

風船はなんで光っているんですか?

Toyotaka:

風船の中にLEDのシステムが入っており、それをリアルタイムで音と連動させて光るようにプログラミングしています。

一ヶ月ほど、「風船が生きている」をテーマに、タッチデザインや連携、コントロールするといったことに取り組んできました。タッチデザイナーといってる時点でストリートダンサーではないな(笑)。こういったこともチームビルディングのひとつだと思いますね。

パフォーマーもシステムの知識を持つ必要があり、「もっとピカピカ光らないの?」という要望を実現するためには、「このシステムに、これを打ち込んで、コンマ何秒なのね」といった、「実現するのって、こんなに大変なんですね」という点を理解しなければなりません。

お互い寄り添うことが大切で、チームの中にしっかり入ってクリエイトしていく必要があると、踊りながらも痛感していました(笑)。

THINK AND SENSEの野望とは?

(JIKKENの最終的なゴール、ラスベガス進出)

喜々津:

これから目指すところは「ラスベガス公演」!!

(会場どよめき)

Toyotaka:

今日一番大きな反応(笑)ストリートジャッジで。

喜々津:

国外に目を向け、海外でも通用するパフォーマンスを発信していきたいと思っています。

僕らは日頃から「こんな新しいパフォーマンスを作ってみたい」とか、「テクノロジーを使ったこんな表現ができるのではないか?」と激しくディスカッションしながらやっていて、「なにか新しいエンタメができないか」ということに興味がある方はぜひお声がけください。

稲葉:

日本のアーティストが海外でテクノロジーを融合させたパフォーマンスを行うことがありますが、実際に現地で参加してみると、オフィシャルの集客数と本物の集客数に差があり、現地は結構寂しい……というケースもあります。

これはそのアーティストがいい悪いという話ではなく、日本語の歌を聴きたい人となると、ターゲットになる人数がガクッと減るということを意味しているわけです。僕がToyotakaたちのパフォーマンスでいいと感じるのは言葉がいらないことなんです。

また、もうひとつXRの重要な課題は、XRのコンテンツというと基本アニメーションやコミカルなもの、いわば「コミック・アニメ寄りのコンテンツのフィールドでしょ?」と誤解されているケースも多々あると思っています。

XRはテクノロジーなので、どんなことだって表現できます。僕らが目指しているのは、コミックだけに限らず、肉体で限界の表現にきている人などもXRを活用して、言語の壁を超え、もっとたくさんの人に楽しんでもらえるプロジェクトをやっていくこと。それがゴールです。

僕らは企業やクリエイティブ、エンジニアと一緒に、JIKKENで成功事例を作ろうとしているので、「こんなことやろう」「こんなことできませんか?」とか、どんなレベルでもぜひ声をかけていただければと思います。

それでは、ありがとうございました。

(了)

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