英サセックス大、東京工業大らの研究者チームは、ヘッドセット等のデバイスを使わずに360度から視聴可能な3DCGのディスプレイ技術を発表しました。あらゆる角度から立体を確認できるだけでなく、音の効果、さらには触感まで加えられるというものです。
極小ビーズを超音波で操作
このディスプレイは、空間に3DCGの映像を投影します。オブジェクトは裸眼で360度全方位から見ることができ、本当にそこにあるかのような強い存在感を持ちます。
ベースとなったのは、スペイン・ナバラ大学のAsier Marzo氏らが考案した技術です。この手法では、コーヒーカップほどの空間に極小のプラスチックビーズを動かし、光を当てます。ビーズを動かすのは超音波です。コンピューター制御のスピーカー60台をビーズの周囲に配置し、毎秒9メートルの速度で動かせるといいます。
このようにビーズの動きを操作しながら、発光ダイオードを用いて赤、緑、青の光を投光。光は、ビーズに反射した時のみ目に映ります。この反射は人の目の認識よりも速いため、動く3D画像のように見えるということです。
音と触感を追加
イギリス・サセックス大学と日本の東京工業大の研究者等はこの技術を応用し、より大きく複雑なイメージの生成に成功しました。さらに加わったのが音、そして触感です。
まず、超音波スピーカーを大幅に増やし512台配置。毎秒100回の速さでビーズを動かします。これはベースの研究の10倍で、より素早くイメージを動かせます。このようにして、複雑な物の動きを3Dで再現しました。動画にある地球の回転や、蝶の羽ばたきはその一例です。
そして音を加えるために、スピーカーが発する超音波が可聴周波数となるよう微調整します。また触感については、赤外線センサーでユーザーの手に照射。音波もその部分へ当たるようにし、皮膚に圧力を感じさせます。
ベースの研究者も高く評価
この研究成果は学術雑誌「Nature」で発表され、先のMarzo氏は「我々の結果より10倍も優れている」と高く評価しました。
今後よりパワフルな超音波スピーカーや複雑な配置、ソフトウェアアルゴリズムの改善が進めば、3Dディスプレイの改良も期待できそうです。
360度投影のディスプレイは、ソニーが円筒型のスクリーンディスプレイを発表しています。
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MoguraVR
(参考)Science