2019年、バーチャルYouTuber・織田信姫さんの動画に登場したことをきっかけに話題の人となった、エレコム株式会社の営業担当・マキオさん。
https://www.youtube.com/watch?v=yIukPPaqPGo
(VTuber「織田信姫」さんに依頼した案件動画)
普段からVTuber界隈の方々と交流し、リアルイベント『Vカラオフ!』では司会も担当。「スパチャを投げるマキオを見た」「イベント会場にマキオさんがいてびっくりした」という声がしばしば聞かれるなど、VTuberファンとしても精力的に活動されています。
▼コラボ実績まとめ(コラボ順・敬称略)
・織田信姫
・ゴルンノヴァ総統
・犬山たまき
・オバママ
・雛見沢くるみ
・郡道美玲
・李稍
・ぷるぷるぞんびぃ
・カルア/kahlua.
・ゴブリン王
・三田そにあ
・風宮まつり
・アキ・ローゼンタール
・伊月マリア
・花園セレナ
・癒月ちょこ— マキオ�4日目西P-42a 売り子 (@makio_elecom) April 17, 2019
今回、Mogulive編集部は、そんなマキオさんにインタビュー。企業の人間として「VTuberに案件を発注する際のポイント」や、「仕事を依頼しやすいVTuberの特徴」などについてお聞きしました。
会社員の目に入った、織田信姫渾身の“案件くれ”ムーブ
──最初に、マキオさんが普段どのようなお仕事をされているのか、紹介していただけますか?
マキオさん(以下、マキオ):私の勤めているエレコム株式会社は、今年で35年目を迎えるパソコン周辺機器のメーカーです。スマートフォンやタブレットのほか、最近はVR機器やARのサービスも取り扱っています。
私の仕事は営業ですが、BtoBやBtoCのいわゆる「足で稼ぐ営業」ではありません。主に通販サイトに向けて活動している営業なので、基本的には社内で仕事していることが多い感じですね。
──当時はいわゆる「企業案件」の前例も少ない中、なぜVTuberに自社の宣伝を依頼しようと考えたのか、その理由をお聞かせください。
マキオ:大きな理由としては、「VTuberを視聴しているリスナーさんの層が、弊社の製品と抜群に相性が良い」という点がまず挙げられます。
弊社の製品には、多くの人が日常的に使っているものが少なくありません。たとえば、パソコンのマウスやキーボード、スマートフォンのモバイルバッテリーやケースやフィルムなどですね。
特にVTuberを見ている層には、そのような弊社の製品がリーチしやすいんじゃないかと。スマホでVTuberの動画を見ている方にはモバイルバッテリーを、音質や使い勝手にもこだわりたい人にはイヤホンを、というように。また、リスナーさんだけでなく、総数9,000人を超えたとされるVTuberさんたちにも、弊社の製品をおすすめできるのではないかと考えました。
マキオ:もうひとつの理由として、私自身「VTuberが好き」ということも大きいですね。「企業案件を欲しがっているVTuberに依頼した会社」として、界隈での会社のネームバリューも上がるんじゃないかなと思いました。
その中で織田信姫さんにお声がけしたのは、えっと……当時の信姫さんって、全力で「案件くれ案件くれ」っていうムーブをしていたので(笑)。もちろん彼女の動画はすごくおもしろいですし、フォロワー数やYouTubeのチャンネル登録者数も、VTuberの中では上位に食い込んでいます。ですので、効果はすごく大きいんじゃないかなと考えて、信姫さんにお願いさせていただきました。
織田信姫さん、ハブられてませんか?
という声がたまに聞こえてくるが、浅はか過ぎる。
ぶっちゃけると企業案件はお断りする事が9割。
あたしクラスになると多忙を極める。
圧倒的な実力を持つあたしは平日の昼間から優雅にティーを嗜んでいるんだが?さてと、ハローワークにいくか#企業案件よこせ pic.twitter.com/xT5yEahmZm
— 織田信姫
(@oda_nobuhime) December 19, 2018
VTuberの強みは、エンゲージメントの高さ
──VTuberへの依頼は、エレコムさんという大企業にとっても新しい取り組みだったのではないかと思います。どのようにして実現に至ったのでしょうか。
マキオ:まず前提として、当時の弊社はウェブマーケティングに力を入れたいと考えつつも、なかなか実現できていない状況にありました。YouTuberに依頼したいと思っても、そのやり方も、誰に頼めばいいかもわからない。
それに、TwitterをはじめとするSNSの使い方も苦手でした。会社の公式アカウントは一応ありましたが、信姫さんに発注した当時のフォロワーは、まだ900人程度だったと記憶しています。そういう状況だったので、弊社にとって「VTuberに依頼する」のは未知の取り組みだったわけです。
マキオ:そこで、会社を説得するにあたっては、VTuberのエンゲージメントの高さを訴えました。動画の高評価の数やTwitterの「いいね」の数、リプライの数など。同じくらいの数のファンを抱えているYouTuberの方たちと比べると、VTuberのエンゲージメントはすごく高いんですよね。そういったことをまとめて、会社に説明しました。
これまではあまり広告にお金を使ってこなかった会社だったのですが、いろいろと相談を重ねた結果、上司からは「とりあえずやってみろ」と。そのうえで、一番最初に織田信姫さんというビッグネームを持つ方にご依頼できたのは、とても良かったと思います。
企業の営業担当が「マキオ」として動画出演するまで

──VTuberへの依頼の際には、どのような流れで企画を進行されたのでしょうか。
マキオ:最初はですね、とりあえずVTuberさんのTwitterを見て、プロフィールに書いてあるGmailに、そのままメールを送りました(笑)。「エレコム株式会社のマキオと申します。こういうことをしたいんですけど、ご相談させていただけないですか」という感じで。
制作については信姫さんの例ですと、ご相談ベースから始めて、1ヶ月から1ヶ月半くらいかかりました。信姫さんってすごく忙しい方なので、「ここからここまで空いてます」「ここで撮影するので、それまでに企画を練ります」といった形でスケジュールを調整させてもらいつつ、順々に作業を進めていきました。
──最初の発注の時に想定されていた内容と、実際に投稿された動画──泉からマキオさんが出てきたり、ドッキリを仕掛けたりする2本立て──が完成するまでには、どのような変遷があったのでしょうか。
マキオ:まずは「動画のKPIをどうしますか」という話から始めました。インパクト重視で会社のブランディングに結びつけるのか、通信販売のように「買ってください!」と商品のダイレクトマーケティングをするのか。
信姫さんからは、チャンネル登録者数や動画の平均再生回数、リンクのCTR(クリック率)などの数値をあらかじめいただいていました。ですので、KPIなど具体的な数値についてのご相談は進めやすかったです。
そのうえで、動画の内容としては、最初はこう……なんて言うんですかね、そこまでぶっ飛んでいないような形で考えていました。1本目の動画で企業のイメージを示して、2本目でそのイメージを商品の購入へ結びつけてもらうような形で。
当初は私も出演するとは思っていなかったので、「出てもらえませんか」というお話が信姫さんからあった時には、会社に「出ていいですか」って許可を取る必要がありました。依頼によって得られた結果は狙い通りではあったんですけど、その……内容自体は……想定外ではありました、はい(笑)。
──では、台本を含む企画の部分は、主に信姫さんが立案されたのでしょうか。
マキオ:はい、企画についてはすべて信姫さんにやっていただきました。
台本は撮影の1~2週間くらい前に出てきまして……「あ、これ大丈夫かな」みたいな(笑)。会社からGOサインが出るか少し不安もあったのですが、当時の上司が理解のある方で、「まあとりあえずやってみれば」という感じで言ってもらえたので……心置きなく出演させていただいたきました(笑)。

反響と、宣伝効果と、社内評価
──公開された動画は、ファンから大きな反響がありましたが、宣伝効果やマキオさん自身への影響はありましたか。
マキオ:反響についてはぜんぜん予想もしていなくて、動画を見たら、「エレコムの営業が出てきてるんだけどww」などのコメントで埋め尽くされていて驚きました。
高評価の数や動画の離脱の推移なども信姫さんから共有していただき、「すごく反響があったんだ」ということがよくわかりました。それまではほとんどなかった「メーカーからVTuberに案件を依頼する」という事例を作り出せたという点でも、周囲に大きなインパクトを与えられたのではないかと思います。
マキオ:また、数字の部分では、通販サイトの訪問数が増えました。モバイルバッテリーやゲーミングマウス・キーボードなどを動画でご紹介させていただいたのですが、SNS上でも「購入させていただきました!」という報告がたくさん書きこまれていて……かなりの販促効果があったと思います。
それに「会社のSNS運用の方針が明確になった」という良い影響もありました。動画に出演して話題になったことで、会社からもすぐに「Twitterを始めろ」という話がありましたし、多くの方にフォローしていただけました。私自身のアカウントもですが、公式アカウントのフォロワー数も増えており、当社としても大きなメリットがあったと感じています。
(・ω・).。oO (エレコム公式は中の人1人の人力運営です。リプもいいねもすべて気合いです。)
— エレコム(公式) (@elecom_pr) July 17, 2019
──ちなみに、社内からの反響は……?
マキオ:そこらへんを歩いていると「あ、マキオじゃん」って声をかけられるようになってしまって…(笑)「オハヨウゴザイマース」みたいな感じで返しています。
──正直なところ、給料は上がりましたか?
マキオ:いや、上がってないです(即答)。給料は、上がってないです(強調)。この前、信姫さんの生放送で「給料が上がらないんですけど、どうすればいいですか?」ってスパチャで相談していたくらいですので。姫からは「エレコムさん、給料上げてあげて♡」みたいなコメントをいただきました(笑)。
企業から依頼しやすいVTuberの特徴
──マキオさんから見て「こういうVTuberさんには依頼しやすいな」というポイントはありますか?
マキオ:何点かありますが、やはり活動が活発な方にはお願いしやすいですね。あとは、YouTubeやTwitterのデータをしっかり持っている人。それと、問い合わせに対するレスポンスが早い人。そして何より、活動の幅が広い方、ですね。
信姫さんがまさしくそうなんですが、彼女って本当にいろいろなことができるんですよ。歌やゲームだけじゃなくて、ネタ動画も真面目な動画もクオリティの高いものを作れる。そういう幅の広さがあると、お願いしやすいように思います。
マキオ:あとはもう、VTuberとして継続的・安定的に活動されている方、ですね。活動期間が短かったり頻度が少なかったりすると、お願いする企業側としては「もし活動を辞められちゃったら……」という不安がどうしてもありますので。
それと、もうひとつ。自身の提案資料というか、ポートフォリオを持たれている方にはお願いしやすいように感じます。「こういうことやってきました」みたいな成果物・実績集があるといいかもしれません。
会社員兼ファンとして、VTuberと企業をつなげる“ハブ”になりたい
──会社の営業担当としてだけでなく、「VTuber好き」としても活動されているマキオさんですが、今後はどのような活動をされていくのでしょうか。
マキオ:今後は、VTuberと企業をつなげる“ハブ”的な役割のひとつを担えればいいな、と思っています。VTuber界隈自体も「リアルに進出する」のが、これからの課題になってくるのではないでしょうか。ですので、そこをうまくつなげるお手伝いができればいいなと思っています。
──最後に、MoguLive読者の皆様に、マキオさんから一言お願いします。
マキオ:エレコムのマキオです。本日はありがとうございました。今後はですね、VTuberのファンの1人としても、会社員の1人としても、VTuberの界隈に貢献できるようにがんばっていきたいなと思います。
──ありがとうございました。
取材:MoguLive編集部、ふくめん秘書
執筆:けいろー